剣岳 ・ 剣尾根〜チンネ左稜線                 2013年8月11日-13日


2008年8月にコルDより、敗退した剣尾根に行ってきた。珍しく好天が続き、チンネ左稜にも足を延ばす事ができた。cccccccccccccmap    アルバム① ・ アルバム② ・ アルバム③ 

8月11日(晴れ)  番場島先ゲート(7:30)〜 (途中で2h仮眠)〜 小窓尾根(12:23)〜 池ノ谷(12:54)〜 剣尾取り付きR10(15:37)〜 コルE(16:17)〜 コルD(18:00

8:35

川崎から関越、北陸道を500キロ走り続け番場島に着いたのが午後8時、装備の確認後、車中泊するが、アブ、ブヨ、熱帯夜のトリプルパンチで、不愉快極まりない。
 
で、眠剤2錠飲んだら、これが効きすぎて、気がつくと既に日は高く、7時を過ぎていた。慌てて歩きだすが、薬がまだ残っていて足元がおぼつかない、何度か転倒し尾てい骨を打ったり、脛をすりむいたり睡摩が襲って来たりと最悪のコンディションだった。
 初日の目標を剣尾根コルEまでとして、焦ら
ず、行くことにする。

白萩川取水口

13:08

雪渓の先の中央の尖った岩が今回の目的の剣尾根末端

重い足取りで、白萩川を巻き、小窓尾根を越えて池ノ谷に降り、雪渓の涼しい風を全身に浴びると、体調は急激に改善して、「絶好調」になる。
 4年前は不自然に真新しいトラロ
ープが張られたり、下草が刈られたりと、立派な登山道になっていたが、今回は草が生え放題で、初めてだったら、きっとルートを外したと思う。
 
ここで2日分、4Lの水を汲む。

 14:02

 


一時間半の歩きで、池ノ谷二股に、正面が剣尾根末端、二股で軽アイゼンを付ける。

 

 

15:07


 

左俣を暫く行くと、土砂崩れの跡なのか?高さ5mは有ろうか、大量の土砂が堆積していた。
 ここ以外は前回同様、落
石の少ない安定した雪渓だった。

 15:30


取り付きのR10、ここを40分上り詰めると剣尾根のスタートになるコルEだ。

今回は雪渓から岩へ素直に乗り移る事が出来ず、3mの懸垂下降で一旦、沢床に降りてから取り付いた。
 上部の草付
きはバイルを打ち込んで、登ったコル。

16:56


コルE 先をキワドイ草付き、木登りを終えると、左の岩峰が現れるが無名峰らしい。
 前回はここをコルDと間違えてい
た。写真中央から取り付き、10mほどでバンドに達し、左にトラバースして、上部の草付きに抜ける。
 残置ハーケンが有
るので、ビレーした方がいいと思う。


 

17:19


トラバースバンドまで上がって、見下ろした所

前回はロープを出したが、懸垂支点の構築、トラバースの懸垂が厄介だったので、今回は空荷でバンドまで登り、そこからザックを引き揚げた。

 17:54


 その先の何層にもなった「藪こぎ地獄」を抜けると、「コルD」になり正面に剣尾根の顔「門」が姿を現す。

 ルート図によると、この先はコルD右端の岩を登り、稜線を伝って、コルC先の岩を登り門下まで行く。近くに見えるが、時間がかかりそう

 18:30

計を見るとちょうど18時になっていたので、コルDを今宵の宿にする。計らずも5年前と全く同じ所だ一時はどうなってしまうのか、先が読めなかったが、コルDまで上がれれば、この先は大丈夫そうだ。
 
テントを張り終えて、眺めの良いコルに移動して、夕暮れの日本海を肴に酒を飲んだ。人に気兼ねすることなくクライミング、スキーに集中できる西側はいい。
 
次回は右俣から何処かを登る、なんてのもいいかな。

テントから望む馬場島、富山湾

 18:39


 


富山湾に沈む夕日


 

19:24

夕食とワイン

カップヌードルは食欲がなくても、食べられるので、私にとっては何よりの御馳走。以前は真空パックになった詰め替えが売っていたが、最近は店頭から消えている。
 
標高は2300m位だから、昨晩の様な事は無くぐっすり眠れた。

2日目 8月12日(晴れ)

コルD(5:40)〜コルC〜門〜剣尾根上部スタート(9:55)〜長次郎の頭(11:00)〜池ノ谷ガリー〜三の窓〜チンネ左稜スタート(13:00)〜T5待ち(14:30−15:30)〜チンネの頭(16:40)〜長次郎の頭(17:35)

 5:30


朝から絶好のクライミング日和だ。体調も良く、5時半スタート。こんな早く岩登りをした記憶は無い。
 
左はコルDの岩、正面を登り右に回り込み稜線に出る。易しく見えたので、ロープは出さなかった。

その先、稜線を辿る。

 5:55


 

すると、コルC先に威圧的な岸壁が目の前に擁立する50mは有りそうだ。

 5:55

一旦コルCの底まで下がって、写真の左下より取り付き、5m直上して、5m右にトラバース後、直上するここはロープを出して登ったが、いつも鬼門になるトラバースでロープがスタックしてしまった。
 必死で岩にへばりついているときに、
風に流されたロープが、ハーケンに絡まってしまったのだ。落ちる事を予感したが目の前の作業だけに全ての神経を集中していたらしくじることなく、窮地を脱することが出来た。
 
その後の懸垂とユマーリングはフリーソロの3倍の時間と体力を使ってしまう。ロープを出せば、安全かと言えば、必ずしも、そうでは無いから単独登攀は難しい。

6:49


 


核心のトラバースを終え、直上してガバをつかんだ所で、振り返る。

 6:49


 

その上は、傾斜が落ちて、すこぶる快適だ。カム、ハーケンで懸垂点を作る。

8:06

そして、「門」

岩と草付きのコンタクトラインのバンドを進んで、右手のクラック状に取り付く。
 
バンドまで空荷で登り、そこから荷揚げし
た。

 8:26


クラックを上がった所より見下ろす。背後は池ノ谷まで一気に切れ落ちていて、凄い高度感だ。

一手、二手、三手で、直ぐ上の左上するバンドの縁に手が届き、ヨッコラッショと体を引き揚げる事に成功その先は易しいランぺの歩き。

 9:09


 

その先、易しい短いルンゼ、スラブを経て、ドームにに向かう。

 9:30

「門」をくぐると、チンネ、小窓の王、長次郎の頭、そして本峰が姿現す。正に門そのものである。
 
写真の中央は随分貧
相に見えるが、たぶん「剣尾根ドーム」で、その先を下ると、左手からR2が押し上げてくる右に下りればドーム稜へ。
 
そのコルから右上に続く岩稜帯が剣尾根上部。2パーティー4人が確認できる。2010年の5月にR4を登った時の雪稜とは、全く景色が違う。ただ写真左に見える三ノ窓の見え方は、同じだった。

10:03

ドームからR2のコルへ降りると、剣尾根上半分のスタートだ。

ロープはザックにしまい、足元はそのままで暫く行く事にする。直ぐ上で、入山以来初めて会った3人パーティーをパスさせてもらう。
 左のチムニーは重荷だときつかったので、リッ
ジ伝いの方がきっと易しいと思う。彼らと先のパーティーは同じ山岳会で、上半部だけを、目的に来たそうだ。

10:03


写真を取りながら、90分ほど、気持ちよい稜線歩きが続く。

10:24


正面が「剣尾根の頭」人パーティーがいたが、右から捲った。この頭をクライムダウンすると、北方稜線の長次郎の頭に達し剣尾根終了点となる。
 このクライムダウンは最後の
最後に足元を掬われない様、慎重に

11:03

北方稜線から見る、八つ峰と長次郎雪渓

時間はまだ11時を回った所で、天気も心配なさそう、体力も残っているので、テント等をデポしてから、チンネ左稜へ継続する事にする。

 

12:02

池ノ谷ガリーと小窓の王

思っていたほど悪くはなかった。長次郎雪渓取り付きはチンネや八つ峰を終えた人達と思うが、10人位賑わっていた。

12:41


三の窓のテントで、寛いでいる人達を尻目に、チンネ左稜線取り付きに、雪渓をトラバースする。
 承知の上だが、 六本
爪アイゼンでは心持たない。アックスをしっかり打ちこんで、何とか凌いだ。

12:54

左稜1P目のフレーク

チンネの取り付きは、人の気配も、コールも聞こえなく、ひっそりと静まり返っていた。
 この調子だと、チンネを思う存分楽し
めそうだ。フリーソロで完登を目標に13時ジャストに登りだす。


浮き気味のホールドが多く、緊張する場面もあったが、ババを引く事は無かった。


 

13:04


その上

レイバックで越えるが、岩がぐらついて、危なかった

 13:50


 

真ん中のピークまで、一気に上がる。

 13:50

 

左手の八つ峰

真ん中辺りから見下ろす。この辺りは草付き土のルンゼが多く、余り快適とは言えない。

14:22


T5下のニードルを直登すると、先行3人パーティーが核心部を登っていた。

14:30


 暫く見物させてもらう。

15:50

核心部のハング様を越えた所から見下ろす

フリーソロでここまで順調に来たが、奮闘中の先行者を見てしまうと、些かビビりが入ってしまった。ハング気味の所だけロープを出す事にする。
 ハング部
の岩は浮き気味な下部のに比べ、しっかり安定していた。残置支点も豊富で不安は無いが乗越すところはロープ有でも、それなりに緊張した。
 30m先までロープを延ばし、尖った岩にロー
プを固定して、懸垂、ユマーリングをした。

16:21


ここからのナイフエッジは正に、これぞ「チンネ左稜」って感じかな

16:22


時折、ガスがワーッと湧き出し幻想的な雰囲気に感動する。

16:30


 

先ほどの3人パーティーを抜かせてもらう

16:35

チンネの頭に無事到着

もっと混雑している事を予想していたが、スタートが遅かった事が幸いして、楽しいクライミングを堪能する事が出来た。
 欲を言えば、もう一時間遅くても良かったか。
池ノ谷への下りは悪い、今回も慎重に一歩一歩降りたが、小さい岩雪崩を起こしてしまった。人が下にいたら、恐ろしくて降りる事は出来ないだろう

18:05


長次郎の頭から少し下がった唯一、奇跡的に平坦な岩の間にテントを張った。
 日没まで見晴らしの良い岩に横たわ
り、ワインを片手に、誰も居ない八つ峰、チンネ、長次郎雪渓、本峰を眺め今山行を回想した。
剣に乾杯!

今回は自分でも不思議な位、体が動き、思い通りのクライミングが出来満足であった。

 

3日目  8月13日(晴れ)

テント(6:00)〜剣岳(7:00)〜早月小屋(40分休憩)〜馬場島(12:10)

山頂から望む立山方面
 山頂付近の展望を動画で

意外と侮れない北方稜線を辿り、剣岳山頂に着くと、今までとは、様子が一変して沢山の方で賑わっていた老若男女を問わず皆さん、おしゃれには気を使っているようだ。特にトレールランスタイルの人が多かった。ジャージ姿で登っている人なんか今は居ない。

下山は写真の早月尾根を下った。一般道とはいえ、標高差2300mを下らなくてはならない。小屋から下はボクシングでよく言う、ボディーブローの様にジワリジワリ下半身に堪えてくる。山は5月の薬師岳、富士山スキー以来だから、当たり前だろうが、頻繁に山に行っていたころは、走って下る事もあった。今はそれは出来ない。山で使う筋肉は山でしか鍛えられないということか。そう言えば、山の先輩がいつも言っていたな〜。下山後、馬場島荘で汗を流し、クライマーからドライバーになる。

 

 

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